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KUSHIRO

北海道東男子休日-真冬釧路行- DAY OFF AT WINTER KUSHIRO (後編)

2019.03.27

  • 男子休日委員会 Board of Boys’ Day Off

"よそ者"の眼で 地元民と宝探し

離れがたい気持ちで文具店を後にした僕たちは、「クスろ」の面々の案内で彼らのお気に入りの店に向かった。「eureka SouthAve」というハンバーガーショップは、オーナーが友人と一緒にデザインしたという店内がとても可愛らしい。温かみのあるイエローのライトと心地よい音楽が寛いだ雰囲気を演出する。オーストラリア産牛100%手ごねパティビーフに加え、市場で選んだその時期に取れる新鮮な野菜を使ったハンバーガーは、よりパワーアップした美味しさとなっている。僕たち一行は、そんなすてきな店内で、さっき文具店で掘り出したばかりのお宝を披露し合った。「クスろ」のメンバー3人は、さらに盛り上がった様子で、僕たちがビッグサイズのダブルチーズバーガーやベーコンエッグバーガーにかぶりつく様子をインスタグラムのストーリーで撮影していた。「クスろ」と「男子休日」。普段はそれぞれ別の仕事をしている僕たちだけれど、こうして、日常生活で集めた釧路のすてきな情景を切り取って共有するというコンセプトは、図らずもぴったりと一致していた。

eureka SouthAve
〒085-0841 北海道釧路市南大通3丁目1−5
営業時間:火曜日〜土曜日 11:00-20:00(L.O 19:30)
日曜日 11:00-18:00(L.O17:30)
月曜定休日、その他不定休
電話番号:0154-45-1188

もっと釧路の魅力に切り込みたいなら、古本屋「豊文堂書店 北大通店」を旅のマストとしたい。ここには、釧路にゆかりのある文学、風土、観光本など、あらゆる専門書が書棚に陳列されている。ほかにもレコードやペーパーブックがたくさんあり、ファンにはお宝発掘の楽園だ。僕は、本の山から2001年のアニメ映画『千と千尋の神隠し』の映画パンフレットを発見したし、Azonaはcraft ebbing & co.の絶版書を買った。奕凱はというと、いろいろな年代の『スターウォーズ』関連雑誌を、ひと山ごっそり手に入れた。僕らが台湾から来たことを知ると、主人は遠慮がちに言った。「台湾映画なら、私が一番好きなのは楊徳昌(エドワード・ヤン)ですね」。ほんの短い訪問だったのに、作品からすぐに気心が通じ合う。それこそがこの地方書店の最大の魅力だろう。

  • 豊文堂書店 北大通店
    〒085-0015 北海道釧路市北大通8丁目1
    営業時間:10:00-19:00
    不定休
    電話番号:0154-31-4880

再び日常の景色へ 旅は一期一会

「豊文堂書店 北大通店」を出ると、すでに夕日が傾きかけていた。僕たちはたまらず早足で幣舞橋(ぬさまいばし)に向かった。海に夕日。その大自然が織り成すショーの瞬間を、最高の場所で観賞しようとようやく橋に辿り着くと、そこには多くの観光客が場所取りをしながら待っているのが見えた。河口から冷たい風が吹き付け、観光客を身震いさせる。しかし、火のように真っ赤な夕日が一人一人の瞼を照らし、赤く暮れなずんでいく空は、そんな寒さも一瞬で忘れてしまうほどの美しさだった。僕たちは、奕凱が切る絶え間ないシャッター音を聞きながら、過ぎ去っていくこの時を全身で感じていた。この貴重な黄昏時は毎日やって来るけれど、旅人にとっては一期一会の体験だ。ほんの数分も経たないうちに夕陽は雲の合間に隠れてしまった。後は、この美しい景色がフィルムにきれいに焼き付けられていることを期待するのみである。

幣舞橋
北海道釧路市北大通

日が沈んでから、僕たち一行は釧路でもっとも古い屋台エリア・赤ちょうちん横丁で晩餐をした。日曜の夜は休んでいる店も多いが、幸いなことに1人で切り盛りしている「赤横びすとろ TAKKE」は日曜も営業している。腕の良い店主さんが出した海老アボカドに、みんなは「美味しい!」と声を上げ、さらに海鮮や野菜、肉料理など、言うまでも無くどれも絶賛。料理を楽しみながら僕たちグループは英語と日本語を交えながらおしゃべりに興じ、グラスを挙げて「乾杯!」と叫んだ。今日一日のスケジュールも無事に終わろうとしている。すると、ちひろさんが明日の朝はパンがいいか、それともラーメンがいいか聞いてきた。Azonaが欲張って「両方食べられますか?」と聞くと、ちひろさんは「いいですよ。じゃあ、少し早めに出発しましょうか!」と笑いながら答えてくれた。

赤横びすとろ TAKKE
営業時間:17:00~25:00(L.O.24:00)
月曜定休
電話番号:080-1867-0153

パン?それともラーメン? 朝食で直面した究極の選択

「HATCH BAKERY(ハッチベーカリー)」は、市街地から少し離れた場所にある。木造の建物に赤い窓枠が目を引く店だ。店内の陳列棚には色々な種類のパンが並べられていて、選ぶのに困ってしまう。というのも、どのパンもかなり美味しそうだから。地元出身のオーナー請川さんは、千葉のパン屋で十数年修行した後、その職人技を故郷に持ち帰って店を開いたそうだ。毎朝4時に起きてパンを作るのも、すべてお客さんに出来立てのパンを味わって欲しいからだと言う。「あのドーナツ、超美味しいですよ!」トレイの上は、3人が食べたいパンですでに一杯だったが、ちひろさんはそう言うと、もう1つドーナツを追加させた。朝ラーメンの事も頭によぎったが、店の外に出たところで、我慢できずドーナツをぱくり。残りのパンはなんとかこらえて持ち歩くことにした。

  • HATCH BAKERY
    〒085-0063 北海道釧路市9 文苑1-9-3
    営業時間:7:00〜17:00
    木曜日・第2水曜日定休
    電話番号:0154-65-5185

開業60年、4代続く老舗ラーメン店「まるひら」は閑静な住宅街にある。店構えは地味で、目立つ装飾もない。メニューもいたってシンプルで、「塩味」と「正油味」の2種類だけ。それでも、朝早くからひっきりなしに常連客が訪れ、壁には有名人のサイン色紙がぎっしりあるところを見ると、やはりこの店は只者ではない。「この間は自転車で北海道を一周している台湾人が、わざわざうちの店に来てラーメンを食べて行ったよ。」ラーメンを半分ほど食べたところで、ニコニコ顔の女将さんが僕たちのところまでやって来て台湾に関係する思い出を語ってくれた。朝ラーメンを面白いと思っているのは僕たちだけではない。「朝食にラーメンを食べるのは、わたし達も初めて!」意外にも、遠路はるばるやって来た僕らのワガママが、地元人「クスろ」のメンバーに初体験をプレゼントしてしまったのだった。

ラーメン まるひら
〒085-0835 北海道釧路市浦見8丁目1−13
営業時間:9:30〜17:00(L.O.16:45)
水曜、第2・4木曜日定休
電話番号:0154-41-7233

誰も知らない街を進む 振り返る度に出会う絶景

朝からパンとラーメンをたらふく食べてお腹はいっぱい。釧路グルメは僕たちの胃を充分満たしてくれた。ちひろさん達は、そんな僕たちをすかさず米町公園まで散步に連れ出してくれた。ここは、釧路市発展の原点で、今でこそ市街区から外れているが、高台に登ると最高の眺めを楽しむことができる。港と果てしなく広がる海原を見た後は、少し足を伸ばして崖の上から炭鉱列車のレール跡を見下ろした。聞くところによると、釧路の炭鉱列車は3月に運行を停止し、その幕を閉じるという。残念だが、あまりゆっくりする時間も無かったため、少し眺めるだけに留めた。あまりに寒く、また平日だったからか、街はひっそりと静まり返り、もしちひろさん達が案内してくれなければ、こんな隠れた美景があるとはまったく気づかなかっただろう。

釧路を発つ前にどうしても訪れたかった場所、それは、空港に向かう途中にあるコーヒーショップ「SHOP & cafe RHYTHM」だ。ウッディな店内には吹き抜け窓から明るい光が差し込み、店内のセレクトショップ「send」のディスプレイにはこだわりのセレクト商品が並んでいる。そのどれもが「どうぞ買って帰って!」とメッセージを発しているが、確かにショッピングするならここが最後のチャンスだ。買い物欲を満たすと、今度は胃袋が僕に囁きかける。店内には、ピザ、サンドイッチ、カレーライスなどがありどれも美味しいが、札幌にある石田珈琲店の石田骨喜が飲めるのがなんとも嬉しい。帰途に着く前にあの口いっぱいに広がる香り高いソフトクリームを食べて、釧路の旅の素敵な終止符とした。

SHOP & cafe RHYTHM
〒084-0906 北海道釧路市鳥取大通8丁目7−27
営業時間:10:30~18:00
LUNCH 11:30-14:30(L.O)
CAFE TIME 14:30-17:00(L.O)
日曜・祝日定休
電話:0154-52-5544

北海道は広大だ。夏の終わりの道央・函館旅行から、今回また機会を得てこの地を訪れることになったが、そこにはまだまだ知らない道東の魅力があった。二泊三日の釧路旅行は確かにあっという間だったけれど、幸い「HOKKAIDO TO GO」プロジェクトの慧や「クスろ」の地元メンバーに案内してもらい、美しい自然の景観から地元グルメまで余すところなく楽しむことができた。気候は寒冷だけれど、僕たちの心はいつもポカポカだった。記憶にしっかり刻み込まれた街は、たとえ遠く離れてもずっと、そして鮮やかに、その姿が脳裏に在り続けていくに違いない。

男子休日委員会 Board of Boys’ Day Off

台湾の創作ユニット「男子休日委員会」。意気投合したdato、奕凱とAzonaの3人によって2012年に結成。「你的生活是我遠道而來的風景(君の生活は遠くから来た私の風景)」という概念のもとに、「休日」をテーマにした、生活と旅行にまつわる創作を展開。台湾の無印良品の「MUJI to GO」、香港Airbnb、Lomographyなどのブランドとのコラボ企画や、著作に『左京都男子休日』と『北海道央男子休日』の2冊がある。

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