北海道で食べるお肉といえば、ジンギスカン。
そんな北海道で羊肉ではなく「豚肉」に全身全霊を尽くす方が余市町にいるらしい。
カネキタ北島農場を営む北島正樹さんは5年前に先代から養豚業を引き継ぎます。
その当時は普通の「北海道産豚肉」でしたが、今は「余市産・北島豚」というブランド豚に。
彼の養豚への考え方、余市町にかける熱い思いをブランディングディレクターとして活躍する鶴本氏とともに聞いてきました。
聞き手:鶴本 晶子さん
女子美術短期大学卒業後、ニューヨークと東京を拠点に、現代美術家コラボレーターとして作品制作やマネージメント、企画に携わる。2007年から2014年までSUSgalleryのブランディング、商品開発、製造管理から流通開発までトータルで行い、国内の流通を作り上げる。2015年より株式会社ナガエを母体とする「NAGAE+」の取締役兼COOに就任。高岡に受け継がれて来た金属加工技術を軸に、メイドインジャパンのプラットホームブランド創りに邁進している。
カネキタ 北島農場について
1970年代に2頭の豚から始めた「カネキタ 北島農場」は、恵み豊かなこの町の自然と人とのつながりを背景に発展してきた養豚場で、今では年間1万頭ほど出荷しています。
豚の健康を支えている水は地下150メートルから汲み上げたきれいな水を使用。食材としての安全性や養豚場内外の衛生への追求を続け、毎日のように手間と配慮を重ねて、豚を大切に育てています。
その肉、子どもに食べさせますか?
北島さん 僕が養豚を引き継いだ時に、中国の餃子事件がありました。
その時自分の子供にその肉を食べさせるかって思って。
それならば、自分で薬を与えずにやろうと取り組んだのがきっかけで、自分の作る豚肉にこだわりを持つようになりました。
ー食の安全ですね。
一方で、うちの親は生産すればいいって考えだったんですよ。
でも僕は「なんでうちが作ったのに名前が載らないんだ」と思ってしまって。これも、自ら養豚を始めた一因ですね。
ー当時の養豚産業では、病気の予防のために抗生物質を与えるのが一般的だったと伺いました。
そうですね。ただ、うちは経営が厳しい時期があって抗生物質を与えられなかったというのもあります。
あとは地下150mまで掘って出た水を検査したところ、たまたま菌が少ない水だった。そもそも病原がなければ、病気にならないので抗生物質もいらない。
だから健康な餌を食べた、健康な豚を作れるんです。
ー北島豚の大きな特徴は何でしょうか?
カロリーをあげるために油を入れるんですけど、動物性の油じゃなくて「植物性の油」を入れてるんですね。だから無駄なものなく、カロリーを上げることができました。北島豚はしゃぶしゃぶにしてもほとんど「あく」が出ない。お年寄りが好んで食べれるようになったと、よく聞きますね。
いつでもどこでも駆けつける生産者
北島豚を使おうと考えているお客さんには、まず自分から足を運ぶそうだ。
北島さん 新しく北島豚を扱おうと考え中のレストランやお店には、まず最初に僕が行きます。北島豚の良さを熱弁するんですよ。その後、すぐ連絡が来て値段を聞かず皆さん「使う!」と言ってくださるんですよね。
ー精肉業者さんではなく北島さんがお客さんのところに直接行かれる理由は何でしょうか?
業者さんはあくまで北島豚を取引先に売ってくれているだけ。生産まではしてません。だから、お客さんが質問しても業者さんが答えられないこともあります。そこでワンクッション、ツークッション生まれてしまう。そうであれば一番「北島豚」を知っている僕が行ったほうが、話が早いし僕の思いも伝えることができます。
「動く生産者」だとよく言われます。「こんなやついねぇ~よ~」って。
ーニッカウヰスキーのレストランでも北島豚のメニューがありました。
余市や札幌のお店にも卸してます。
加えて5社ほどの精肉業者さんと取引させてもらってますね。
それぞれ精肉・加工・ギフトや飲食店向けなど違ったジャンルで北島豚を広めてもらってます。
北島豚を使うレストランのシェフや精肉業者さんも「北島豚を食べた人が北島豚の良さを伝えてくれる」ので、これほど嬉しいことはないです。
ー自ら新規の取引先へ出向かれることも、周りの方が宣伝してくれるのも北島豚のおいしさがあってこそですね。
自分が作るものに余程の自信がないとなかなか足を運べません。
それに実際会って話をするとこちらの「熱意」が伝わります。だからこそ「おいしい豚」だとみなさん広めてくださっているように思いますね。
ーなるほど、道内でそれほど人気になっている北島豚ならより高い値段で売れるのではないですか?
いや、値段は上げないつもりです。値段を上げてしまうと、誰も食べれなくなってしまいます。
僕が大切にしたいのは「みんなの健康」なんですよね。だから、値段が高くなり買えなくなると意味がないんですよね。
値段を上げることは簡単です。でも自分のポリシーとは違う気がするんです。
余市町を変えていきたい
僕の中には常に「余市町をより良くしたい」という思いがあります。
余市町にはニッカウヰスキー以外何もない。一方で余市町で生きていきたい人もいます。
最近は若手経営者で集まって、一緒に町をどうしていきたいかお酒を飲みながら語る機会もあります。年齢を気にせず僕を質問攻めにするような熱い後輩もいます。
この数年で築き上げたものを土台にして後輩にも町への思いを伝えていきたいですね。
余市のいいものを北海道へ、全国へ伝えていけたらと思います。
ー今後の具体的な展望を教えてください。
今「余市町でしか買えない北島豚」を作ろうと思っています。
余市町に人を呼び込みつつ、余市町を発信していきたいですね。
そのために、自分ができる最大限のことをやっていきたい。
「大胆に謙虚であれ」
これは僕の先輩から頂いた言葉。
自分がどんなに成長しても、自分は自分であり続け現状に驕り高ぶらずやっていきたいなと思います。
カネキタ北島農場公式サイト
https://www.kanekita-kitajimabuta.com/北島豚を食べられるお店・レストラン
余市食材レストラン ヨイッチーニ / スープカレー 海ぞく / らーめん 空に虹 / 讃助 (サスケ)
居酒屋ダイニング いっ徳 / 余市川温泉 / カクト徳島屋旅館 / 菊鮨 (2019.3 現在)北島農場のお取り寄せが出来るサイト
ふるさと納税(ふるぽ)
時々地元
- 鶴本 晶子
-
女子美術短期大学卒業後、ニューヨークと東京を拠点に、現代美術家コラボレーターとして作品制作やマネージメント、企画に携わる。2007年から2014年までSUSgalleryのブランディング、商品開発、製造管理から流通開発までトータルで行い、国内の流通を作り上げる。2015年より株式会社ナガエを母体とする「NAGAE+」の取締役兼COOに就任。高岡に受け継がれて来た金属加工技術を軸に、メイドインジャパンのプラットホームブランド創りに邁進している。
- 中井 涼
-
ライター。北海道生まれの静岡育ち。中学・高校と部活漬けの日々を過し、大学進学で念願のUターンを果たす。趣味は、旅行・温泉・スープカレー・演劇。